プレス抽出について ③(味わいの特長)
プレスを選んだ理由の一つとして、我々が味覚チェックをする際に行うカッピング(カップテスト/テイスティング)プロトコール(やり方、条件)に一番近い方法ということがあります。
これはコーヒーの生産地でも消費国におけるコーヒー会社、中小ロースターなど世界共通の方法で品質チェックのために行われているものです。
カッピングはとてもシンプルな方法です。まずドライ(粉)の状態の評価を行い、次にカップの中に粗挽きにひいたコーヒーの粉を入れ、沸騰したての熱湯を注ぐだけです。ここから先はスプーンを使って決められた方法でコーヒーの液体を評価していくのですが、ここでは省略します。
温度変化による味覚の変化もポイントの一つです。コーヒーの粉を熱湯にどぶ浸けすることによって、長所、欠点を丸裸にするのです。(スペシャルティコーヒーは欠点ゼロが前提ですので、すばらしい印象度を探す長所評価になります。)
スペシャルティコーヒーだから、液体に含まれる色々な香りの成分、特長、良さを存分に味わっていただきたい。そのことから、プレスを選択したということです。
スペシャルティコーヒーをフレンチプレスでいれた舌の上の感覚は、おいしいお茶、紅茶などを飲んでいる感覚により近いかもしれません。
プレスは液体の濃度や味のパンチ(強弱)を味わうのはあまり得意ではありません。
あとはフィルターが金属(ステンレスメッシュ)でできているのがポイントです。金属フィルターは紙やネルと比べ目が粗く、抽出成分を吸い取りません。コーヒーの微粉がカップに入り、そのためコーヒーの液体は濁ります。飲んだ後のカップの底には微粉が残るでしょう。
しかし、これらが味そのものに悪い影響を与えることはありません。(ざらつきますので、底までは飲まない方が良いかと思います。)
プレスで抽出したコーヒーはカップの液面に「コーヒーオイル」が浮きます。このコーヒーオイルにこそ、コーヒーの芳香成分が含まれているのですが、これをカップに落とすためには金属フィルターが物理的に良いという訳です。