建築家 手塚貴晴+手塚由比さんのこと

ご来店いただくお客様の一定数の方に、「この建物はだれが設計したのですか?」または、「建築家の手塚さんが設計されたんですよね?」と言われる方がいらっしゃいます。

一度、手塚さんをはじめ、弊店のプロジェクトに携わっていただきました方々をご紹介させていただこうと考えていました。最初に当店の設計、監理をしていただきました建築家の手塚 貴晴さん、手塚 由比さんのことをお話したいと思います。

 

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手塚 貴晴さんは、手塚建築研究所の代表でもあり、東京都市大学 建築学科の教授という一面もお持ちです。

初期の作品「屋根の家」は屋根を生活空間の一部として利用することを前提に作られた斬新なコンセプトで知られています。屋根の家のコンセプトが次に紹介する代表作「ふじようちえん」にも生かされた感じもします。

屋根の家

屋根の家

 

代表作の一つである「ふじようちえん」はクリエイティブディレクター 佐藤 可士和さんとの協働で作られましたが、建物のデザイン、設計、監理は建築家である手塚さんご夫妻です。「ふじようちえん」は日本建築学会賞、日本建築家協会賞、The Architecture award, Asia Pacific Property Awards 2009、UNESCOより世界環境建築賞(Global Award for Sustainable Architecture)等々を受賞され、名実ともに日本を代表する世界的建築家のお一人です。

英ガーディアン紙が21世紀に世界に作られた建築ベスト25を選ぶThe best architecture of  21st century の12位にもランクされました。

ふじようちえんについては、TEDでの手塚さんのプレゼンテーションが氏の建築に対するお考えがよくわかると思いますので、ぜひご高覧ください。当時はTEDで再生回数が世界第7位になったそうです。(英語でのプレゼンですが、画面左下の設定ボタンで日本語訳文をテロップでみることができます)

 

 

 

私とお二人の出会いは今から遡ること20年くらい前になります。(といっても、私が一方的にお二人のことを知っただけなのですが)

建築雑誌を見るのが好きで、建築雑誌に掲載された手塚さんご夫妻が設計されたある住宅が目に止まりました。

その住宅は、非常にシンプルな構造で、リビングの一等地にフルオープンのキッチンが庭に向いて設置されていました。

今ではこういった設計は昔ほど珍しくないですが、当時日本では台所は大抵、北側の暗い、ジメジメした印象の場所に作られていた時代です。生活の重要な食を司る台所がなぜか、一番悪い場所にレイアウトされるというのが、当たり前だったのです。

しかし、手塚さんの考えは違っていました。

おそらく、食というものをくらしの中で大切なもの(中心)と位置づけ、一等地である場所へレイアウトしたのだと思います。

リビングの一等地に置くためには、ただ置くだけではすみません。排気や水回り、デザイン上できる限り目立たないように、場所の制限も多くあり、簡単ではなかったと思いますが、うまく意匠的に考えられており、むしろ「キッチンを置くなら、ここしかない」という塩梅になっています。つまり、レイアウトやデザインに一定の必然性があるのですね。

20年前、この建築の写真をみて「これだ!」と思いました。いつか自分の家を建てることがあるなら、手塚さんに声をかけてみたいとずっと思っていました。(20年以上前の空想です)

 

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「腰越のメガホンハウス」お二人を知るきっかけになった建物ではないのですが、こういうイメージですね。キッチンが一等地にあります。

 

そのときはサラリーマンでしたし、もちろん資金的な裏付けなど全くなく、まさか自分がコーヒー屋になるとは考えてもみなかったですが今回店舗を建築するにあたり、色々な方法の中から、簡単なところからではなく、まず一番ハードルの高い建築家の手塚さんにお願いしてみようと思ったのです。

先にご紹介した通り、人気がある世界的建築家になっていましたから、受けてもらえるのかどうか、、ということもありましたが、こちらの考え、思いを率直にお伝えし、「やりましょう」とおしゃっていただいたのです。

 

これは私の解釈ですが、手塚さんの建築は非常にシンプルです。

どういう風に引けば良くなるか。できるだけ、引いて、引いて、エッセンスだけを残すような建築です。

シンプルにするために、見えない部分で難しいことをしているということもあると思います。

例えば、弊店の空間内部には本来なら屋根を支えるはずの柱や壁が一つもありません。また、深い庇なのに、庇の先に柱を一切使わず方杖だけで支えています。屋根自体も美しい梁の構造で軽量です。

このあたりの裏付けは、構造設計家ともタッグを組みながら行っていると思いますが、簡単なようで簡単ではない部分であり、シンプルな構成にするために常識的(教科書的)ではない考え方を多く取り入れていると思います。(常識的には、内部空間の真ん中に屋根を支える柱を少なくとも一本は立てたくなりますし、深い庇を支えるには庇の先端に柱を置きたくなるのがむしろ普通です。)

 

由比さんもよくお話しされていますが、「完全なものを目指すというより、何か一つのお気に入りの部分を作る。そうすることで、その建物を長く愛してもらえる。そして、意識しなくても、自然と機能するようなデザインがいい。」そんな建築だと思います。

色々完璧を求めすぎて、何が特長なのかわからなくなるより、一つでも際立ったものを作る。そうすることで特長がよりわかりやすく、親しみを持って受け入れられ、永く大切に扱ってもらえる。。ということでしょうか。

私からお願いしたのは、木造建築であること、美しい木造の構造をあえて見せたい、店舗専用の建物(住居と兼用した方が、税制上有利なことは明らかですが、ここはあえて分けたかった)であること。くらいです。その後、現地調査のうえ、プレゼンテーションの模型ができてきたのが、黒い、丸い建物でした。(計画着手前に手塚さんをはじめ、所員の方に何度も現地に足をお運びいただきました。)

この瞬間から、できる限りこの模型通りの建築を進めていくという施主の仕事が始まりました。

初期プレゼン模型は、車のコンセプトモデルに近く、実際の1/1スケールの立体物(建物)を模型通りに作るのは様々な面で困難も予想されました。

 

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周辺との親和性を確認するための環境モデルを制作。奥に見えるのが初期プレゼン用の模型。

 

円形建物は、ここ数年手塚さんがいくつか手掛けられていたのを知っていましたが、まさかうちで円形か、、と最初は戸惑ったのが正直なところです。弊店の場合は、コーヒー屋と言っても、単純ではなく、コーヒーロースターとしての焙煎工場としての機能、豆小売販売を行う店舗としての機能、brew barの機能等々複合的、多機能を求められます。

果たして円形でうまくいくのかが懸念されました。

この点については、インターフェイスとしてのインテリアの工夫が多く必要なのですが、造作、置き家具も含め、見た目にはわからない工夫を多く凝らしております。

円形のネガを消して、良さを発揮させるためにはインテリアの工夫が不可欠だったのです。

新しい試みが多くありますので、その都度モックアップを作っての検討が必要になります。基本的に1/1実物大での検討です。

 

机モック検討 大2

手塚建築研究所におけるインテリアのモックアップ検討の一部

 

コンパクトな建物ですが、外観上円形(実際には多角形)であるため、それなりの存在感があります。しかし、そもそもが木造の低層建物ですし、杉板を使った下見板の壁など日本の伝統的な建築ディテールを多く採用していますので、すぐ目に馴染みます。色も城壁などによく使用され古来からある渋炭の黒です。

 

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塗装色、塗料選定のためのからサンプルと下見板貼りのモック。実際に現場に並べ、自然光下での確認が不可欠です。

 

円形であるとともに、(私が思っている)一番のみせどころは深く、低い庇(ひさし)です。

建物はコンパクトですが、周囲の犬走りは全長約50mほどあり、この深く低い庇の下が客席の一等地であることは疑いようがありません。

庇の高さも限界まで低くしました。日差しの問題等ありますが、私個人は、出来る限り深く、低くというのが良い庇の条件だと思っています。

最近の日本の住宅を見ておりますと、庇や軒はあまり出さないか、全くない家もあります。モダンに見えるからということからかもしれませんが、日本の気候を考えますと、軒や庇の機能的な部分は見直される日がきっとくると思います。

 

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庇の1/1スケールの方杖のモックアップを作り、高さを検討中の手塚さん

 

この庇があるおかげで、風さえ強く吹かなければ、土砂降りの雨でも庇の下の席では濡れることがありません。アウトドアの雨の中で快適に過ごせることはなかなか非日常的であり、そのため、ちょっとぜいたくな感覚も味わえるのです。

是非当店では庇の下をご利用いただきたいと思っています。

(現在のところ、コーヒー豆をお買い上げいただいた方のためのテイクアウトのコーヒーとさせていただいております。

 

実は建築コンセプトが出来上がってから、他の所用もあり、幾度となく京都を訪れました。京都の街並みや建物から何かをこちらから提案したかったわけではなく、このどこか古来の日本的な建物の施主として、理解を深めたかったということがあります。

 

出来上がったものを見て、これなら自分にもできるというのは簡単なのですが、ディテールも含め、何もない状態からこういった建物をデザインすることはなかなかできることではありません。

こういったところにも建築家の価値があります。

そして、デザインだけでなく(デザインにはもともと設計という意味もありますが)、建物として模型の通りのものを作る。

意匠的に優れているだけではなく、同時に物理的に理にかなっていて、技術的にも優れた建築を作るということは簡単ではないと思います。

建築家の作る建物は都度実験的な部分もあり(新しい試みをしていく訳ですから当然です)、予算も含め、施主と建築家はあるときは盟友、あるときは考え方の相違からぶつかることすらあります。相手がたとえ世界的建築家であってもです。

 

施主はというと、単にお金の工面だけをすればいい「お客様」ではありません。

建築プロセスのうえで、建築家、建築元請け会社に委ねる部分は非常に大きいですが、プロジェクトの最終的な責任者は建物完成後もそれを使い、維持していく施主なのです。

そういった意味で、誰にでもおすすめできるものではありませんが、覚悟を持って接していく方であれば、これぞと思える建築家と仕事をされることを是非おすすめしたいと思います。

 

小さなコーヒー豆屋が、まして店舗の建築だけでできることはとても限られています。

一方で、建築には周囲を変える力があると手塚さんはおっしゃいます。町の風景をより魅力的なものにするために、建築に対する機運を良いものにするために、そして素晴らしい味わいのコーヒーを求め、お店に来られるお客様の心に響くようになれますよう努力を続けてまいります。

 

 

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